遺言と異なる内容の遺産分割を相続人で行うことはできますか?
遺言執行者のいない場合には、相続人全員の合意があれば、遺言で指定された方法と異なる分割をすることは可能と考えられています。
被相続人は、遺言で遺産分割の方法を指定することができます(民法908条)。
しかし、場合によっては、相続人同士で円満に遺産分割を行うために、遺言の内容とは異なった内容で遺産分割の合意を行う必要がある場合もあります。
このような場合、遺贈においても放棄が認められていることから、受遺者が遺贈の放棄をした上で、全員の合意により遺産分割を行うことは可能であると考えられています。
ただし、遺言執行者がある場合は、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をしてはならないとされており(民法1013・1014条)、判例はこの規定に違反した行為は絶対的に無効であるとしています(最判昭和62年4月23日)。
遺言執行者は、遺産に対する管理処分権を有しており、相続人全員の合意のもとに、遺言内容と異なる内容の財産処分を求められても、遺言に基づいた執行をなすことができますし、相続人に対し任務違反になるものではありません。
そのため、遺言執行者がによる遺言執行の必要なケースでは、遺言執行者と協議の上で、同意を得ておく必要があります。